猫が飼い主を噛む理由とは?対処法を詳しく解説

猫が噛む
ライフスタイル

猫の問題行動の中でも、怪我を伴い重い問題となるのが、噛み癖などの攻撃行動です。脳の異常などの特別な事情がない限り、猫が噛むのには理由があります。その理由の中でも大きな比率を占めるのが、ストレスです。そのため、猫と人が共に快適に暮らしていく上で必要なことは、猫にストレスを与えないことなのです。

噛み癖のある猫ちゃんと一緒に暮らしていると、解決策を見つけるのはとても困難なことのように感じることでしょう。しかし、猫本来の習性を理解し、猫ちゃんにストレスフリーな暮らしを提供することで、噛み癖を直すことも可能なのです。今回は、どうすれば猫ちゃんの噛み癖を直せるのかといった疑問にお答えします。

野生の習性を残したまま進化したイエネコ

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人が猫と一緒に暮らし始めたのは、今から約1万年前だといわれています。人と一緒に暮らし始めた野生のリビアヤマネコは、人と一緒に暮らしながらだんだんと家畜化され、現在私たちと一緒に暮らしているイエネコになりました。

同じように人と一緒に暮らしながら家畜化されてきた動物に犬がいます。犬は、家畜化されていく過程で多少野生の習性が薄まってきた部分もあり、今の姿になりました。しかし、猫は野生の習性をほぼ残した形で今の姿に至っています。そのため、猫と一緒に暮らしている私たち人間は、猫本来の習性を理解した上で、猫と人がうまく共存できる環境を提供していく必要があるのです。

本来の猫たちの生活は「狩・食事・身繕い・睡眠」

猫は、完全肉食性の動物です。したがって、自分で獲物を捕まえて殺し、それを食べるという行為がとても重要です。当然、体や感覚器の構造も、消化系の臓器も、狩をして獲物を捕まえ、それを殺して食べることで、生きていくために必要な栄養を得られるようにできているのです。

視力は人と比べてあまり良くはありません。色も、人よりも狭い範囲の色しか認識できません。しかし、小さくて素早く動くものをとても敏感に識別する能力を持っています。鋭い嗅覚と聴覚も、狩には欠かせない重要な能力です。普段は隠しておける引き込み式の爪は、音もなく獲物に近寄ることを可能にします。

そして何よりも、わずかに残った退化した鎖骨は肩や胸骨に繋がってはおらず、その代わりに強力な筋肉が発達して前肢と胴体をつなげているため、猫の前肢は獲物を抱え込むような動きができ、この前肢の高度な可動性と鋭い爪と犬歯が、猫の強力な武器になっています。さらに、脊椎骨間の結合も可動性が高く、つながっている後肢のパワーは絶大です。しかし、持久力がないため、じっと獲物を待ち伏せ、近づいた獲物を一気に襲うという、とても省エネな狩猟形態を持っています。

このような本来の習性に従って狩をした猫は、捕まえた獲物を殺し、食事をし、ゆっくりと身繕いをした後、やがて安らかな眠りにつくのです。

「狩・食事・身繕い・睡眠」を満たすことが大切

完全肉食性の猫は、狩をして得た獲物を食べ、ゆっくりと身繕いを行い、やがて安らかな眠りにつくのが本来の猫の生活だということをみてきました。これは、猫にとってはとても自然なことで、仕方なくやっていることではありません。したがって、狩・食事・身繕い・睡眠の流れを生活の中から奪ってしまうと、猫は満たされない状態に陥ります。つまり、どんなに美味しい食餌を食器に盛られて出されても、一緒に暮らしている猫ちゃんは、十分な満足感を得ることができないのです。

猫は生まれながらの名ハンターなので、人と一緒に暮らしていても、ハンターとしての満足感を味わえることが、ストレスフリーにつながるのです。

猫には縄張りも重要なポイント

猫にとってもう一つ大切なポイントがあります。それは、縄張りです。猫は、縄張りを守りながら生活する動物です。猫が自分の縄張りの中にいる時は、自信を持つことがき、安心していられます。逆に、自分の縄張りではない場所にいるときの猫は、とても不安を感じています。また、自分の縄張りに不審者が侵入してきた時も、とても緊張します。

猫が自分の縄張りを主張する行為は、マーキングです。体にある皮脂腺を家具や飼い主さんに擦りつけることで自分の匂いをつけ、縄張りを主張します。また、自分が信頼している飼い主さんと自分の匂いを混ぜることで、信頼できるグループとしての匂いを形成しようとします。

猫ちゃんと一緒に暮らしている飼い主さんは、猫ちゃんが安心して落ち着ける縄張りを作り、そしてその縄張りを常に見張れるような、猫ちゃん専用の居場所を作ってあげることが大切です。また、多頭飼いの場合も、それぞれの猫ちゃんに居場所を用意してあげることが必要です。

噛み癖の原因を突き止める

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何か問題が発生した場合、それがどのような問題であっても、なぜ問題が発生したのかという原因を突き止めることが大切です。原因を見極めないまま、ただ目に見える問題に対処すると、一時的には改善されたように見えたとしても、根本解決には至らずに、悪化したり別の形で問題が発生したりしてしまいます。猫の噛み癖についても、まずはその原因を突き止めることが大切です。どのような観点で見、考えていけば良いのかについてみていきましょう。

病気や怪我はないか

一緒に暮らしている猫ちゃんがよく飼い主さんに噛み付く場合、その理由が病気や怪我であることがあります。猫は、普通自分が弱っていることを他者に知られないようにします。それは、相手がたとえ信頼している飼い主さんであっても同じです。具合が悪い時も、体のどこかが痛い時も、決して騒いだりせず、静かにじっとしています。そのため、猫ちゃんの具合が悪いことになかなか気がつかない飼い主さんは多いのです。

見た目には特に異常がないように見えたとしても、同じ場所を触ると噛み付いてくる、ある姿勢で抱き上げた時に噛み付いてくるというような場合は、病気や怪我が原因である可能性があります。つまり、痛かったり苦しかったりという時に攻撃してくるわけです。また、噛み付いてくる行動に脈略がない、以前とは性格が変わってしまったようだというような場合も、脳や神経系の病気である可能性があります。

いずれにしても、病気や怪我が原因の場合は、噛み癖以外にも、必ず他の症状がみられるはずです。食欲がない、排泄をしない、動かずにじっとしている、けいれんや震えがみられる等です。このような場合には、動物病院で診てもらい、まずは治療を行いましょう。

飼い主さんが原因になってはいないか

猫ちゃんが飼い主さんを噛む場合、猫ちゃんにではなく飼い主さんに原因のある場合があります。いくつか例を挙げますので、ご自身に当てはまることがないかどうか、考えてみてください。もしも思い当たる節がある場合は、まずその行動を改めてみることから始めましょう。

①荒っぽい扱いをしていませんか

猫ちゃんと一緒に遊ぶ時に、荒っぽい扱いをしてはいませんか。飼い主さんにとっては遊びでも、猫ちゃんにとっての遊びは模擬的な狩です。人や犬にはゲーム感覚というものがありますが、猫ちゃんにとっての遊びは狩なので、荒っぽい扱いをするとそれを引き金に恐怖心や防衛本能が引き出されてしまい、猫ちゃんは本気で飼い主さんを獲物として行動してしまう可能性があります。それは獲物を地面に倒し込み、前肢で抱え込んで噛み付くという行動に発展していく、危険性が高い行動です。

②しつこくしていませんか

飼い主さんが猫ちゃんを撫でると、最初のうちは目を細めて喜んでいたのに、撫でていたら突然噛まれたということはありませんか。最初は気持ちの良い刺激であっても、撫で方や持続時間が過剰になると、その刺激は猫ちゃんにとって不快なものに変わります。もし、このような傾向がみられる場合は、撫でる時間を短めにして切り上げる等、飼い主さんの方で調節をするべきでしょう。

③手で遊ばせていませんか

猫ちゃんと遊ぶ時に、おもちゃを使わずに飼い主さんの手を使って直接遊ばせてはいませんか。そうすると、猫ちゃんは飼い主さんの手を獲物だと思い、攻撃するようになります。それは、猫同士の喧嘩を止める時も同じです。直接飼い主さんの手を使うのではなく、おもちゃで猫ちゃんの気をそらして場所を移動させるようにし、獲物である攻撃相手は常におもちゃとなるようにしましょう。

観察と記録が問題解決の役に立つ

猫ちゃんの噛み癖の原因が病気や怪我ではなく、飼い主さんの行動が原因でもないことがわかった場合は、猫ちゃんの行動をよく観察し、それを記録してください。それが、噛み癖を解決する役に立つはずです。

次のような観点で行動を観察し、その結果を記録してみましょう。

  • 飼い主さんがよく噛まれるのはいつですか
  • 飼い主さんがよく噛まれる場所はどこですか
  • 飼い主さんがよく噛まれるのはどのような時ですか
  • 猫ちゃんの住環境にストレスとなる要因はありませんか

猫の噛み癖を解決する方法

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冒頭で、猫の噛み癖は問題行動の一つであると書きました。問題行動とは、飼い主または第三者が問題視する動物の行動のことで、その行動は正常行動である場合も異常行動である場合もあります。猫が噛むのは異常行動ではなく、正常な行動です。猫にとっては自然な行為ですが、それが飼い主さんや第三者にとって問題となる場合、人間本位の考え方だけではやめさせることができません。猫にとって、自然にやめさせるための工夫が必要です。では、猫の噛み癖を解決するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。

狩と食事をセットにしてストレスを発散させる

猫ちゃんの住環境にストレス要因はみつからなかったという場合でも、狩と食事がセットになっているかどうかを確認してみましょう。猫本来の習性は、自ら獲物を狩り、その獲物を殺し、それを食べるというものでした。飼い主さんは、毎日猫ちゃんと一緒におもちゃを使って擬似的な狩遊びをしているかもしれません。しかし、その遊びの中で、猫ちゃんは獲物をきちんと弄んで殺した満足感を味わっていますか。獲物を殺した後に食事をすることで、猫本来の満足感を味わっていますか。

もし、猫ちゃんとの遊びがLEDライトのような実態のないものを追いかけさせるだけだとしたら、その遊びの最後では、きちんと実態のあるおもちゃを使って捕まえさせ、弄ばせるように改善してください。そして、猫ちゃんが十分に狩を楽しんだ後に食餌を与えるようにしてください。それで猫ちゃんの満足度は格段に上がり、噛み癖を防止できるはずです。

ストレス発散をさせるべき時間はいつが適切か

猫ちゃんが飼い主さんによく噛み付くのは、どのような時間帯に集中していたでしょうか。飼い主さんが起きた直後、飼い主さんが出勤しようとする直前、会社から帰宅した直後など、だいたい同じような時間帯に集中してはいませんでしたか。その場合は、ちょうどその時間帯が、猫ちゃんにとって溜まったパワーが爆発する時間なのだと考えられます。もし、いつも同じような時間になるとよく噛み付くというのであれば、その時間帯の少し前に、おもちゃを使って擬似的な狩遊びをさせ、それに続けて食餌を与えるようにしてみましょう。猫ちゃんはそこでパワーを使い、満足感を得ることで噛み付くことがなくなっていくはずです。朝の出勤前の場合は、そんなにゆっくりしていられないかもしれません。しかし、たとえ5分でも遊ぶ時間を作ってあげることで、噛み癖を防止することができるかもしれないのです。少しだけ早起きして、試してみる価値があるとは思いませんか。

また、時間には関係なく、来客に対して噛み付く癖のある猫ちゃんの場合は、自分の縄張りに侵入してきた不審者に恐怖を感じているのだと考えられます。猫ちゃんにとって安心できる特定の居場所は確保できていますか。キャットタワーや棚の上、キャットステップ等、猫ちゃんが安心して落ち着ける居場所を作ってあげることが大切です。また、とても臆病な猫ちゃんの場合は、誰にもみつからずに身を隠せるような場所を作ってあげることも大切です。部屋の隅に、猫ちゃんが入れるギリギリの大きさの箱を置いておくだけでも十分です。

ストレス発散をさせるのに適した場所はどこか

いつも同じような場所で飼い主さんに噛み付くという場合は、その場所に問題が潜んでいる可能性が高いです。たとえば、窓際でよく噛み付かれるという場合、窓の外に猫ちゃんの外敵がいて、そのせいで猫ちゃんが攻撃的になっているのかもしれません。外敵の正体は、野良猫かもしれませんし、道路を走っている車のヘッドライトかもしれません。その場合は、庭に野良猫が入ってこないようにする、窓の外が見えないようにする、窓の近くにキャットタワーのような見張り台となるものを設置し、窓のこちら側をしっかりと猫ちゃんの縄張りにして外を見張れるようにしてあげるなどの方法が効果的です。

また、特に外敵が潜んでいないような場所が猫ちゃんの攻撃場所となっている場合は、何かしらの理由でその場所が猫ちゃんにとっての格好の狩場になっていると考えられます。猫ちゃんと一緒におもちゃで擬似的な狩遊びをする時に、その場所で遊ぶことで、猫ちゃんの満足度が上がり、噛み癖を防止できるでしょう。

飼い主さんに原因がある場合は改善しよう

前述の、飼い主さんに原因がある行動に思い当たる節のあった方は、ぜひその行動を改善してください。荒っぽさやしつこさについては、猫ちゃんによりその許容範囲が異なります。多少荒っぽい方が好きだという猫ちゃんもいるでしょう。いつまでも撫でて欲しがる猫ちゃんもいるでしょう。それぞれの猫ちゃんの個性を見極めて、適切な度合をみつけるようにしましょう。

まとめ

一緒に暮らしている猫ちゃんに噛み癖がある場合、まずは猫ちゃんが噛み付く理由を突き止めましょう。そのためには、猫ちゃんの行動をよく観察し、記録しましょう。その結果を基に、噛み癖を改善するための工夫を行いましょう。

しかし、一朝一夕に問題を解決することはできません。くじけずに問題を解決するためには、下記のようなことにも注意してみましょう。

  • 焦らずに続けること
  • 怖がらせないこと
  • 縦方向を活かした縄張り作りをする
  • 来客を怖がる場合は、来客に猫ちゃんとの接し方を事前にレクチャーする
  • 猫が噛んでも叱らない、罰を与えない
  • 家族全員が協力して同じように猫ちゃんに接する

 

増田 暢子

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農学部畜産学科を卒業し、総合電機メーカーでSEとして農業関係のシステム構築等に携わる。退職後、飼い猫の看病をしながらいくつかの小動物関係の資格を取得し、現在...

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